甲状腺全摘出後の登園
幸か不幸か、入院の時から新型コロナウイルスの影響で、結実の園でも自宅保育のお願いがでたので、入退院も含め、お友達に気付かれる事は少なかったと思う。
結実の通っている園では、結実と同じ小学校へ行く子は10人もいなくて、
なので、もうわざわざ皆に言う必要はないかな、と思っていた。
卒園式までに登園したのは、卒園式直前の2日だけ。
その頃は、以前の声とはまるっきり違う高い声だったが、声が出ないというほどではなかったし、
首にはテープを貼っていたので目立ったようだが、なるべくハイネックを着て見えにくくした。
結実には、
「結実ちゃんはまだ年長さんなのに、頑張って大きな手術をしたんだから!
凄いんだよ!
だからね…
もしお友達に、首どうしたの?って聞かれたら…
『病気が見つかって手術したんだ!頑張ったんだよ!』
って言えばいいからね!
何の病気か聞かれたら、知らないって言えばいいし、
もし結実ちゃんが言いたくなかったら、何も言わなくていいよ!」
と伝えていた。
子供は正直だから、もちろん聞かれたようだった。
そりゃあ気になるよね…
でも、結実はそんなには気にしていないようで、聞かれたら答えていたようだし、お友達も、まだ未就学児なので、そこまで深く聞いてきた子はいなかったみたいだ。
小児がん術後3週間の卒園式
長かったような…短かったような3年間。
入園式や、運動会・発表会も毎回ウルッときたものだ。
育てやすい子だったけど、初めての子なので親が不慣れで手を焼く事もあった。
入園してからは毎日大泣きで、鞄にお菓子が入っていないか担任の先生に聞いたり、
発表会では周りが驚くような、とても大きな元気な声で演技をしたり…
親や身内だけの関わりの頃と比べて、集団の中に入るとあんなに幼かった結実が、どんどん社会性を身に付けていった。
卒園式はその色んな思い出が駆け巡って、きっと私は号泣してしまうんだろうな、と思っていた。
コロナの影響もあり、通常よりかなり短いものにはなったが、卒園式が行われることになった。
色々と省略し、進んでいく卒園式。
一応、少しではあるが卒園児の歌もあった。
以前なら、結実は皆に負けじと1人目立つぐらいの大きな声で歌ったんだろう。
それを見て私はちょっと恥ずかしいなと思いながら、結実らしいと涙したはずだ。
でも皆の声に紛れて、結実の声はわからない。
まだ術後3週間程で、あまり大きな声を出すと咳き込んでしまう。
仕方ない…。
それよりも無理をしないか心配になる。
先生達が歌をプレゼントしてくれたり、保護者の方から御礼の挨拶があったり…
その1つ1つに、もちろん感動はしたのだけど、どこか蚊帳の外というか、これまで通りにはいられない自分がいた。
大きくなってくれたことは嬉しいのに、手放しで喜べない。
本当にこれからも大きくなれるんだろうか、という疑問のほうが大きい。
つい数ヶ月前まで、他の保護者の方と同じ目線でいたはずなのに…
もう同じ目線で見ることができないのだろうか…
そんな風に考える自分に気がついて、少し悲しくなったけど…
一時はどうなることかと思ったが、ここに無事結実がいることは本当に嬉しかった。
おめでとう、皆
おめでとう、結実。
甲状腺ガン(全摘出)の診断書や入学する小学校への相談
小児甲状腺ガンだと診断が出てすぐに、ちょうど学校説明会があったので、その際に今後の予定は伝えていた。
小児甲状腺ガンと診断されたこと、基本的に予後が良いとされていること、肺に転移があり、まずは甲状腺全摘出の手術をすること…
立ち話ではあったが、教頭先生に手短に説明した。
手術の様子はこちら。
小児慢性特定疾病の申請の時にも、保健師の方とお話をして、入学する予定の小学校には連絡してくれると聞いていた。
幼稚園からももちろん、小学校へ申し送りがあるはずだ。
だからと言って、このまま何も言わずに入学していいものか?と思っていた。
手術の後遺症が入学までにどこまで良くなっているかわからない。
カルシウムの薬も1日3回なので給食の後に飲まなければならないし…
入学するまでに、一度ちゃんと学校へ相談しておかないとな…
そう思っていた矢先、主治医の先生から
「学校へ出す診断書を書きましょうか?
それと学校の先生へ説明が必要であれば、時間を作るのでおっしゃってください。」
と言われた。
学校の先生への説明は、あくまでも親が不安であればしますよ、という感じで、
医療器具が付いた状態でもないし、後ろに倒れそうになった時以外は、そんなに危険な事もないかな、と思ったのでお断りした。
時間を作り、学校から往復1時間以上かけて先生方に来て頂くほど、説明する事もないだろうと判断した。
でも自分で詳しく説明でき る自信もないので、診断書はお願いした。
病名:甲状腺癌
付記:
上記疾患に対して、 2020/○/◯に頸部手術を施行している。頸部・肩の筋力低下(頭が重い)、両上肢の筋力低下(万歳が弱い、背筋が伸ばしにくい)がある。半年程度で改善すると推測されるが、おおよそ2020年◯月末(術後4ヶ月)までは、鉄棒や、跳び箱、登り棒など上腕を大きく動かす運動は控える方が良い。体操は可能であるが、筋力低下により腕の上がりが悪いため、配慮が必要。また、昼食後に内服が必要。
と書いてくれた。
先生曰く、無理に運動すると四十肩のように痛くなってしまい、治りにくくなることがあるらしい。
3月下旬に入っており、入学式までには説明しておきたかったので、まず学校に連絡を入れ相談に行く日を調整してもらった。
次女を夫の両親に預け、結実と2人で学校に入る。
下駄箱の所で教頭先生が待ってくれていた。
校長室に通され、促されるままに腰かけると、すぐに3人の先生が入ってきた。
保健の先生と、おそらくクラスの補助等をしてくれる先生だったと思う。(緊張していたのと、時間が経ちすぎて忘れてしまった)
一人一人丁寧に挨拶をしてくれ、私も結実と一緒に頭を下げる。
まず診断書を渡して読んでもらった。
それから術後の経過や今の病状、腹筋のような起き上がりの動作ができない事、後ろに反り返る動作なんかは、そのまま後ろに転けてしまう可能性がある事を説明した。
先生達は、真剣な顔で頷き手元の紙にメモしている。
全員がメモをとって下さるので、話すのにとても緊張した。
心配な事は伝えられたし、これで結実の顔も覚えてもらえただろう。
ちゃんと相談に行って良かったなと思えた。
コロナ禍での小学校入学式
日々新型コロナウイルスの感染者数が増える中、時間を短縮したり、一人一人距離をとったりして、なんとか入学式も行うことができた。
幼稚園はブラウスでは無かったので、中にタートルネックを着て、首の傷を隠していたのだが、
小学校はブラウスなので、その中にタートルネックを着るのは不自然だ。
これから通わなければならないし、入学式だけ隠しても仕方がないので、テープが丸見えの状態で行った。
淡々とした入学式だったが、皆ブカブカの制服を着て、大きいランドセルを背負う姿はとても可愛らしかった。
結実と同じ幼稚園から、この小学校へ来た子は10人もいないので、ほとんどが知らない子達だ。
3Mテープを貼っているのが逆に目立つし、これから毎日、お友達に聞かれる事になるのかな…
と心配したが、
緊急事態宣言が出たことで、あまり登校せずに済んだ。
結局、本格的な登校が始まるまでにテープは取れ、カルシウムに関係する薬はもう飲まなくてもよくなった。
朝に1度チラーヂンを飲むだけだ。
声や腕等の運動機能もかなり回復したので、そういう意味では休校で助かったのかもしれないな、と思う。