甲状腺全摘出手術から3日目には小児病棟へ。声が…?
![小児病棟 ICU](https://www.gantokurasu.com/wp-content/uploads/2020/12/childrens-books-1246675_1280-640x360.jpg)
昼過ぎ、小児科の看護師さん二人が迎えに来てくれて、病室へ戻ることができた。
手術前に説明をしてくれた耳鼻科の先生が来ると、結実の顔が強ばった。
先生が、
「こんにちは」
と言っても反応しない。
「昨日鼻からカメラしたから嫌われちゃったかな」
先生は申し訳なさそうに言った。
「ごめんね、今日もしないといけないんだ」
結実は抵抗したが、看護師さんに抑えられ、先生がカメラを入れる。
その時、多分本人なりには力いっぱい、
「いやだーーーーーー!!」
と言い、目からはポロポロと涙をこぼした。
でも驚いたことに、ほぼ声にはなってなくて、空気が漏れる音というか、ものすごく掠れた声が出ただけだった。
聞き慣れない我が子の声に、胸がザワザワする。
本当に大丈夫なの?
先生が言うには術後、結実のようなパターンはよくあるようで、少しずつ声帯麻痺が戻ってきて、声が出るようになるらしい。
その言葉を信じるしかなかった。
甲状腺全摘出後の食事と薬はチューブから
まだ食事も開始できないので、栄養や薬は鼻から胃へ通してあるチューブに注入してもらう。
少し気持ち悪いようで、その度に結実は顔を歪めた。
まだ術後3日目だ。
目に映る光景は、見たくないことばかりだけど…
これからもっと回復して良くなるんだから。
翌日朝からは食事を開始できるからと、夜に夫から
ゆかりと混ぜ込みわかめを持ってきてあげて
と連絡が入った。
元々食事が得意ではない結実。
なんとか食べてくれるといいな。
術後4日、食事を開始。どんどん動けるように…
![小児がん 食事](https://www.gantokurasu.com/wp-content/uploads/2020/12/candy-1961536_1280-640x360.jpg)
翌朝、結実の病室に入ると、ベッドサイドのゴミ箱がティッシュでいっぱいになっていた。
夫がずっと結実の痰をとってあげてくれたらしい。
前日も出てはいたが、夜から量が増えたようだ
足の親指には酸素の計測器が巻かれ、夜は酸素マスクも装着。
酸素濃度が下がると、看護師さんが飛んでくると夫から聞いた。
先生曰く、
結実は肺に転移があるので、どうしても咳や痰が長引くのは仕方ないみたいだ。
食事はお粥を半分程食べた。
胃に繋がっているチューブを抜くには、ご飯を半分以上食べられる事が目標だと言われたので頑張っていた。
「食べられました!!」
と看護師さんに告げると、
出された食事、全てを半分食べて欲しいと言われた。
でもお粥以外は粗切りのキャベツを煮たような物だったり、今の結実には食べられなさそうな物ばかり。
まだ水分もスプーンでしか飲んではいけない、と言われているのに、これはいいのか?と聞くと、
「食事内容について正しく伝わっていなかったようで、おかずはこちらの手違いでした」
と言われた。
悔しかった。
これまでの結実を知っているから、かなり無理をして食べたのがわかるから。
看護師さんや後から謝りに来てくれた小児科の先生に、
「この子は、貴方達の言葉を信じて頑張ったんです!
それを裏切るような事はしないで下さい!
せっかく頑張ろうとしているのに、それを削ぐようなことはやめてください!」
と怒鳴ってしまった。
今考えたら、次頑張ろうね、で済む話なのかもしれないが、その時はかなり気が立っていて抑えられなかった。
主治医の先生からは、固形物はダメだけど、とにかく栄養をとるように言われて、アイスやゼリー、棒が付いた飴なんかを与えた。
氷砂糖を食べるぐらい、飴等の甘いものが好きな結実は、棒付きキャンディを美味しそうに食べた。
美味しい?と聞くと、掠れた小さい声で、美味しいと答えてくれる。
その後には咳き込んでしまうけど、起きている時間もどんどん長くなりYouTubeを自分の操作で見るようになった。
首からのドレーンが繋がった容器を引き連れて、介助しながらトイレへ歩いて行くのだが、その動きもスムーズになってきた。
首は手術の際、神経が切れてしまうから少し痛みを感じにくくなる、と言われた通り、痛み止めもおかげもあってかそんなに痛がる様子はない。
でも真正面から起き上がるのは首に力が入らないようで、ベッドを起こして上半身がほとんど座っている状態であっても、一度横を向いてから手をついて体を支えるような起き上がり方になっていた。
一晩明けて月曜日、また朝から自分の治療に向かっていると、夫から嬉しい連絡が入った。
全ての管が抜ける!!術後5日、初のシャワーへ…!?
![小児がん シャワー](https://www.gantokurasu.com/wp-content/uploads/2020/12/shower-1027904_1280-640x360.jpg)
夜はだいぶ眠れるようになり、朝ご飯も半分は食べたこと。
そして、主治医の先生が来て、胃へのチューブも首の排出液のドレーンも全て抜いてくれたと。
顔や首の腫れのためにステロイドを飲まなければならず、それが苦くて大変だが、シャワーの許可もでたと聞いて早い展開に驚く。
手術の日を含め5日シャワーを浴びていないので、病院に着いて早々にシャワーの予約をとった。
結実に会うと、何も管が無くスッキリしていて身軽そうだ。
ちゃんと回復していってる事を実感できて安心した。
首を覆っていた大きな透明のテープは、細い医療用テープを短く切って、数枚繋げた物に代わっていた。
早速結実をシャワーへ連れていく。
首の傷を気にしつつ服を脱がせて、浴室に入りまず髪を洗う。
術後何故かパリパリになっていた三つ編みにお湯をかけると、浴室内に血液の臭いがたちこめた。
てっきり消毒液かなにかで固まっていると思っていた私は、理由がわかってゾッとした。
両方の三つ編みが固まるくらいの血が…?
首周りを何かで覆ったりしないものなのかな…?
色々疑問には思ったけど、結実が怖がると思い、何も言わず洗い進める。
首の辺りは拒否されたのと、まだ少しふらつきもあったので、なんとなく洗いあげただけだったが、
久々に入浴でスッキリして、結実も嬉しそうだった。
術前説明通りの合併症。声帯麻痺と運動障害、表情に違和感
この日を境に、どんどん良くなっていった。
水分もゴクゴク飲むのではなく、少しずつ飲むならばスプーンじゃなくても良くなり、できる事が増えていく。
保育士さんが遊んでくれる時間や、病棟内のキッズスペースで、大好きなじいじと遊んだり、笑顔もたくさん出るようになった。
夜になったら熱と痰が出たりもしたが、ある程度は仕方ない。
後は声さえ戻ってくれたら…
少しは出るようになってきたが、外で雑音があったら聞き取れないぐらいの掠れた声。
術後起こると言われた声の音質の異常、嗄声(させい)だ。
心配で無理に話しかけて嫌がられることもあった。
真正面から起き上がれない他に、腕が上がりにくい症状もあった。
3ヶ月もすれば良くなっているらしいが、服の着脱が大変そうだ。
他に気になったのが表情。
笑顔が増えて喜ばしい反面、口の周りの筋肉の動きがおかしいのか、これまでとは違う笑顔になる。
顎の方向に引っ張る力が弱くなっているようで、下くちびるが均一に下がらない。
何だか突っ張ったような笑顔になっていた。
顔の腫れは本当に日毎に良くなった。
一番ひどかったのが術後病棟に戻った辺りで、その時はムーミンのように腫れていたのに、それから一週間もすれば、横から見ると二重顎のようでも、正面から見たらほとんどわからないぐらいになっていた。
子供は本当に回復が早いというのを実感した。
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