ICUを出て帰宅すると知らない番号からの電話が…
夜、緊張感を残しつつ夫と次女と家に帰った。
明日早くから病院に行くために、早くお風呂に入って寝ようとバタバタしていた。
すると、
私の携帯に電話が入る。
知らない番号だったが、市外局番で結実の入院している病院だと思った。
心臓が大きく跳ねる。
「もしもし…」
電話にでると、
「もしもし、突然連絡して驚かせてしまい申し訳ありません。
ICUで結実ちゃんを担当している看護師です。
急変したわけではないのですが、結実ちゃんが何度か目を覚ましてしまって…
麻酔は意識が戻らない程度のギリギリの量なので、たまに目を覚ましてしまうみたいで…
その時にパパが居ないことに気が付いて泣いてしまって
「ちょっと今お部屋の外に出てるけど、すぐに戻ってくるよ」
と話して、結実ちゃんも納得しようと頑張ってくれてたんですが、やっぱり泣いてしまってて連絡させて頂きました。」
との内容だった。
その男性看護師さんは、戻って来いとは言わなかったが、自分にも同じ歳の子供がいるとICUで話してくれていたので、子の気持ちも親の気持ちも考えてくれたんだろうと思う。
意識は無いと思っていたので帰ってきたが、結実が寂しくて泣いているなら、と
夫がそのままとんぼ返りで病院へ向かってくれた。
ICUは原則付き添いはないので付き添い用ベッドがなく、看護師さんの「お父さんも疲れるでしょう」との計らいと、「結実ちゃんも安心できるでしょうし」と言われ、狭いベッドで添い寝したと言っていた。
夫は色々気を遣って疲れたみたいだったけど、結実は心強かっただろうな。
手術翌日、まず人工呼吸器を外せることに
翌日は金曜日で、腫れがひどくなく順調にいけば人工呼吸器を外します、と術後に説明を受けていた。
もし外せなければ、土日はスタッフの数が減るので翌週に持ち越すことになるそうだ。
理由は麻酔を止めて少し意識が戻った状態で、意識や呼吸に問題がないことを確認してから抜くので暴れるらしく、たとえ子供でもスタッフの数が足りないとできない、と言われ、人工呼吸器を外すだけでもそんなに辛いのかと、また心が痛かった。
朝から夫に連絡すると、昨日より意思の疎通はできるようになっていて、喉が乾いて水分をとりたがっていると聞いた。
人工呼吸器が外れて一時間程経たないと水分はとれない…早く飲ませてやりたい。
予定通り、朝10時過ぎから主治医の先生が人工呼吸器を抜いてくれて、結実の場合は痰が多かったものの、時間が経っても普通に呼吸できていたので、再度人工呼吸器に戻ること無く、明日には小児科の病室に戻れそうだ、と夫から連絡を受けた。
私は結実の手術日は放射線治療をお休みさせてもらっていたが、あまり日を空けてはいけないらしく、この日も自分の通院からの面会だった。
そして初めての抗がん剤が終わって、結実の病院に着く頃には夕方になっていた。
病院に着いてICUに入り夫と交代する。
結実は人工呼吸器が無くなって、酸素のチューブを鼻にあててもらっていた。
私がICUにいる間、ICU横の談話スペースのような場所では、義両親に抱かれる次女が大泣きしている。
この時期は本当に私以外だと泣き止まなく、短い時間で交代しながらの面会になった。
甲状腺全摘出手術から約24時間経過
結実はまだ痛み止めでうつらうつらとはしているものの、こちらから何か聞くと頷いたりするぐらいにはなっていた。
水分は最初はサラサラとした物は蒸せるから、水よりもジュースを勧められた。
それをスプーンで慎重に飲ませる。
アイスも良いと言われたが、食べても一口二口だった。
夜には看護師さんが、何もなくてつまらないだろう、とテレビを持ってきてくれた。
ICUにもテレビがあるんだなと驚いた。
結実に見るまでの元気はなかったけど、少しは気が紛れたと思う。
スクリーンカーテンを隔てて他の患者さんもいるので、目のやり場があるだけでも助かる気がした。
そして、近所の銭湯へ行っただけの夫とまた交代する。
慣れないベッドでほとんど眠れていないし相当疲れていたと思う。
高齢の義両親は、朝、私と次女を迎えに来て、私の病院へ北向きに30分車を走らせる。
私が病院に入っている間、寝ている以外はほとんど泣いている次女の子守り。
私の病院が終わると、今度は南向きに1時間かけ結実の病院へ…。
この時期、皆体調を崩さないか心配だった。
誰か一人でも欠けたら成り立たなくなるから本当にヒヤヒヤしていた。
術後3日目。首から顔が腫れていつもの結実じゃない…
翌日、土曜のため私の通院がなく、朝から結実の病院へ行くことができた。
夫と交代してしばらくすると、結実が私を見て、
「トイレ」
と口を動かした。
手術の時から紙オムツをつけていたので、そのまま排泄できる事を伝えても、首を振って嫌がった。
どうやら大きい方だったようで、担当看護師さんがオマルを用意してくれた。
酸素の管を外し、他にも色んな管があるので、看護師さんに手伝ってもらいながら、結実を抱きオマルへ移動させるのだが…
管が邪魔で抱き方が不自然になるのと、やっぱり首には力が入らないみたいで、非常に重かったし怖かった。
トイレの後、午後には病棟へ戻れるからと、動いたついでにパジャマに着替えさせる。
いつものディズニープリンセスのピンクのパジャマを着た結実は、全然いつもの結実じゃなかった。
問題ない範囲らしいが、顎から首にかけてだけじゃなく、顔全体が腫れている。
まぶたまで腫れて、目が開きにくそうだ。
熱もあるらしく、体を保冷剤で冷やしてもらっていた。
そしてここまで、結実の声を聞けていない。
都度必要な質問をするも、首を縦に振るか横に振るかだ。
返答が必要な質問には答えないので、こちらが選択肢を用意するような形になった。
前日に鼻からカメラを入れて声帯を見てもらったら、片側が麻痺していると聞いていたので不安になる。
今はまだ体も辛いし話す気にはならないのだろうけど…
早く声を聞いて安心したかった。